「アイスクリームって平和でいいですよね」
なくても生きていけるけど、あったらめっちゃハッピー。
そんな素敵な言葉をインタビュー最後に思い出したかのように放った店主。
まさにその通り。
生きていく上で必要不可欠では決してないアイスクリーム。
ましてや急がないと溶けてなくなってしまう理不尽さも持ち合わせている。
ただ、生活していく上で大切な事を気づかせてくれる存在でもあるのだ。
お日様がサンサンと入り込む全面窓の店内はとっても明るくて、訪れる人みんなを幸せにしてくれる。
今日はそんな街のアイスクリーム屋さんのお話。
沖縄といえば某アイスクリームが有名だったりと、常夏ならではの一定の需要がある。
ただ本当に美味しいアイスクリームを食べる機会は意外と少ないのではないか。
あまりの暑さに体が冷たいものを欲するたび惰性で購入するコンビニのアイスクリーム。
一気にひんやりとして美味しいが、「本当に美味しい」はそういうことではないと思う。
一度丁寧に作られた美味しいアイスクリームを食べると、もう元には戻れない。
ここCAFUNÉ(カフネ)は普天間にあるアイスクリーム屋さん。
沖縄ならではのコンクリの建物も見た目からして水色でとってもキュート。
店内はピンクでさらにカラフルな仕上がりだ。
沖縄の街並みは独特で、堂々と振る舞うカラフルな建物が魅力的。
元々仕事でパン屋の取材をしていたという店主の平良葵さん。
沖縄にはパン屋が多く、プライベートでも仕事でも沖縄に来ることが多かった葵さんは、
軽い気持ちで家探しをしたところ、そのまま住むことにしたそう。
今では夫婦で愛犬のレオくんと、ここ沖縄で日々美味しいアイスクリームを振る舞ってくれる。
「出身が埼玉なんですけど、埼玉は海なし県だから海への憧れがあるんですよ。」そう言うと爽快に笑った。
引っ越して来る時にはすでに「自分でお店をやろう」と思っていたという。
何屋さんをやろうか模索している時、お風呂でアイスクリーム屋さんをやろうと思い立ったそうだ。
インタビュー開始10分で毎日欠かさず食べに来てくれるという常連さんが現れた。
実はこの方のリクエストによりメニューにもなった「George’s Favorite (ジョージさんのお気に入り)」のジョージさんご本人。
バニラアイスに自家製キャラメルソースとキャラメルナッツを混ぜた一品。
このフレーバーはアメリカで良く食べていたそうで、アメリカンな風味にカフネならではの、くどくない甘さが口いっぱいに広がる。
「美味しいからこれをあなたも食べていきなさい」と1000円札を置いて行ってくれた粋なお方。
「沖縄ってアイスクリームに適した食材が充実してるんです。それを活かして、地域に寄り添った、ナチュラルなアイスクリーム屋さんがやりたいなと思って。」
最初は1年間営業していたものの、さらに拡大するためクラウドファンディングで支援を募り、2022年の7月にリニューアルオープンした。地道な努力と行動力の賜物だ。
「アイスクリームって増粘剤とか安定剤、乳化剤が入ってることも多くて割と添加物の多いおやつだけど、それらは使わずに毎日食べても安心で、出来るだけ県産の素材で、季節の味がダイレクトに伝わるようなアイスを作ってます。」と笑顔が眩しい葵さん。
シークヮーサー、カーブチー、パッションフルーツ、キームム(山桃)、ライチ、パイナップル、マンゴー、島バナナなど季節によってとにかく果物の種類がとっても多い沖縄!
沖縄ならではの食材、黒糖や、うっちん(ウコン)、月桃なども、ここだけのアイスクリームフレーバーに早変わり。
卵やきび砂糖、与那国の岩塩など、葵さんご自身で思う確かなものを取り入れている。
「沖縄って本当に素材が魅力的なんですよね。なんていうか綺麗なものが当たり前にあるから、それに気づいていない人が結構多くて、逆に外からきた人の方が敏感だったりするんですよね。」
「それがいいとか悪いとかじゃなくて、CAFUNÉ(カフネ)を通して少しでも感じてくれたらなって思うんです。」
確かにみたこともないほど美しい海や自然に囲まれていることが日常だと、それが当たり前なのだ。
ここのアイスクリームはそんな大事なことを気づかせてくれる。
「近所のおばあがばんしるー(グアバ)は捨てるほどあるって言ってたんだけど、アイスクリームにしたら美味しいんだ!ってびっくりしてて。」
アハハと目を細める葵さん。
「捨てるならください〜!って感じです。」
ちなみにシグネチャーフレーバーは「カフネ」。
ココナッツミルクに、うっちん(ウコン)、ポピーシード、季節ならシークヮーサー果汁が入った元気なイエローのアイスクリームだ。
アイスクリームにウコン?と思うかもしれないが、これがまた非常に合う。
もちろん眩い黄色に着飾ってくれるだけでなく、まろやかなココナッツミルクに程良いアクセントになっていて、素朴さの中に華やかさも兼ね備えているのだ。
(左は紅芋、右はカフネ)
そして忘れちゃいけない縁の下の力持ち、ワッフルコーン。
なんと店頭での手作り。
このワッフルコーンを食べるまで、ワッフルコーンの偉大さに気づいてあげられなかった今までの自分の人生を悔やんだ。
今までのワッフルコーンはなんだったんだ。
そう思うくらい、私はこの時確実に「本当に美味しい」アイスクリームの扉を開けてしまった。
「私はここ普天間が好きで。普天間って、普天満宮が昔からあるので商店街があって街が生きてるんですよね。みんな共存しながら元気にやってて、人が交差していくと街が盛り上がっていくので、その感じを暮らしの中や、県外の人も感じ取って欲しいんですよね。街の一員となっていきたいんです。」
「カフネでも展示などを催したりして、いろんな人が交差していけるような、人と人が繋がっていくような場所であり続けるようにいれたらと思う。そこにアイスもあるよね!ぐらいでいいかなって」そういうとニッコリ微笑んだ。
ちなみに店名のCAFUNÉ(カフネ)は「翻訳できない 世界のことば – エラ・フランシス・サンダース作」の絵本からとり、ポルトガル語で愛する人の髪にそっと指を通して撫でたりする穏やかな仕草のことをいうそう。
「あと、沖縄の言葉でカフー(果報)って、いい知らせのことを言うのでそれもあってこの名前にしました。」
そんなあなたに朗報です。
沖縄にはこんなに美味しいアイスクリームが待ってますよ。
ぜひ普天間にも立ち寄って、ここでしか食べられないアイスクリームに舌鼓を打ってほしい。
愛おしい日々の平和を感じてほしい。そんなお店です。
Photo by Makoto Nakasone
Text by Michiko Nozaki
店舗情報
住所 〒901-2202 沖縄県宜野湾市普天間2丁目12−6
営業時間 12:00-17:00
定休日 日曜日、月曜日
Instagram @cafuneokinawa