このサイトはJavaScriptがオンになっていないと正常に表示されません

沖縄の土を喰らう 「地料理・旬菜 土香る」

沖縄の土を喰らう 「地料理・旬菜 土香る」

NEWS

Read More

「沖縄のグルメ」と聞くと沖縄そば、チャンプルー、タコライスなどを想像する人も多いかもしれない。もちろんそれぞれ美味しくて魅力的ではある。

思う事は人それぞれだが、何を隠そう。

私が沖縄に移住してまず一番感動したのは沖縄の「野菜」だった。

まず種類が豊富で、ギラギラの太陽で育ったからか青々としている。

細く柔らかいというよりは、ワイルドで濃い印象だ。

そして何より見たこともない野菜やフルーツがたくさんあるのだ。

毎週の楽しみは、ファーマーズマーケット。

聞いたことも見たこともない野菜がゴロゴロあって、夫が痺れを切らすまで、

陳列を一列ずつ隅から隅まで見るのが至福の時。

かつては長寿県だった沖縄。

滋味掬すべき地の料理は今もなお生き続けている。

今日はそんな沖縄の食材と日々向き合っているとっておきのお店のご紹介。

最近では観光客がだいぶ戻ってきたこともあり、国際通りは沖縄のお土産探しに人がごった返している。

人の間をかいくぐって少し裏路地に入ったところに「地料理・旬菜 土香る」は在る。

店主の村岡省吾さんが島野菜や沖縄の食材を存分に使って展開するこの小料理屋は、素材の力強さを大切にしている。

旬の野菜を使って最大限に「沖縄の土」で生まれた、そして育った食材の良さを引き出し、一品一品丁寧にしつらえるのだ。

村岡さんは物腰柔らかで、丁寧さが料理を通して伝わってくる。

素朴でいて、濁さない力強さもあるが、後味に繊細な風味の豊かさが香る。

元々作家の水上勉氏による「土を喰う日々 -わが精進十二ヵ月-」という料理エッセイ本に魅せられて「地料理・旬菜 土香る」は誕生した。京都の禅寺で精進料理を学んだ著者が自然と共に「畑と相談して」その日の献立を決め、日々の食材を余す事なく使い、食材による四季折々を感じさせながら調理する様子をしたためた随筆である。

その中でも、村岡さんはこの「畑に相談」することがしっくりきたという。

村岡さんは香川出身で、21歳の時にひょんなご縁で地元の沖縄料理店の立ち上げの際にアルバイトを始めたという。そんなきっかけですっかり飲食業界にのめりこみ、そのまま社員になり5年間働いた。

その後も日本料理屋や洋食屋などの経験を一通り経て、沖縄料理に戻ってきたのだ。

「いろんな料理を学んだ上で、自分が一番抜きん出ることができた料理が沖縄料理だったんですよね。」と冷静に自分を分析する村岡さん。

「嘘のない人生にしたいんですよ。喜怒哀楽含めての自分だから。人間関係も一緒で、仲間に対してもそう思うんです。上っ面の付き合いはしたくないんで。」そういうと爽快に笑った。

野菜と土との繋がりのように、人と人との繋がりを大切にする村岡さん。

その様子は生産者や近隣のお店との付き合い方で伺える。

「地産地消っていう言葉がちょっと軽くなってきている気がするんですよね。正直そんな簡単ではないんです。生産者の方々や魚や肉の卸し先に注文したのを確認しに毎朝会いにいくんですけど、言葉のキャッチボールをすることが大事なんです。」

まさにこのキャッチボールが「畑に相談する」ことなのではないか。

そして土地へ、作り手への感謝が「美味しい」に繋がるのだ。

「良いお付き合いをしながら、人間関係を築いていくことが本当の地産地消だと思う。生産者が元気じゃないと、我々は商いができないですから。」

お話を聞いているとまっすぐな優しさの中にも、山椒のようなピリッとした辛さも感じ取れる。

冬はチデークニ(島ニンジン)が美味しい季節。

チデークニは西洋の人参よりも細長く、黄色で、ほんのりした甘さが優しい味わい。

昔から沖縄では滋養食として食べられてきたそうだ。

そんなチデークニイリチー(島ニンジン炒め)は今オススメの一品。

ニンニクの葉とスーチカー(豚の塩漬け)で炒めたシンプルな沖縄ならではの料理である。

ここ沖縄でしか食べられないものを、丁寧に調理してもらい、大事に食す。

もう一つ大事な一品「どぅる天」のご紹介。

この「どぅる」は沖縄のお正月などのお祝い事の際に出されるドゥルワカシーという、つぶした田芋を細かく切った田芋の茎に豚肉や出汁などを一緒に練り上げたもっちりとしたペースト状のもの。

琉球王朝時代に食べられていた宮廷料理の一つからきている。それをカリッと揚げたものだ。

そもそもこのドゥルワカシーは作るのには相当な手間がかかるため、一から作るお店は数少ない。

食材から工程まで丁寧に説明してくれた店長の長間洋介さん。

それぞれのメニューが持つストーリーを聞いた上で、口に運ぶとより一層美味しく感じるのだ。

「伝える」作業を怠らない土香るだからこその揺るがない安心感。

「沖縄の食の豊かさをお店を通して伝えたいんです。」

どこか村岡さんの料理には、清々しさを感じる。繊細だが原始的な魅力。

水上勉氏の「土を喰う日々 -わが精進十二ヵ月-」に下記の言葉があった。

「土に生まれたものを喰うことの楽しみ、といってしまえばそのとおりだろうが、口に入れるものが土から出た以上、心ふかく、暦をくって、地の絆が味覚にまぶれつくのである。」とある。

その絆を体現しているからこそ「地料理・旬菜 土香る」は、この味が出せるのかもしれない。

Photo by Makoto Nakasone

Text by Michiko Nozaki

店舗情報:

地料理・旬菜 土香る

住所 〒900-0014 沖縄県那覇市松尾2丁目6−24 B1F

営業時間17:00~23:00

定休日 水曜日

@tsuchikaoru.okinawa

Related Article

得る気づきに目覚めるAwayk

得る気づきに目覚めるAwayk

NEWS

那覇から今帰仁(なきじん)まで車を走らせること2時間。

那覇は島全体から見ると南寄りに位置しているため北部までは割と距離がある。
(そう、意外と沖縄は縦長なんです。)

北上していくとシティーからぐんぐん景色が変わっていく。

目に見える色がどんどん増えて。
気づくと亜熱帯の草木が生い茂り。
空と海の色が同化していく。

「意外と遠いんだ。」

だからかな。
そうポツリとぼやいた瞬間少しだけ何かがいつもの生活と分離した感覚。
心のピント修正とも言える爽快感。
そして訪れる安らぎ。

少し離れただけなのに、私の肩の力が穏やかに抜けていく気がした。

沖縄を想う好奇心くすぐられるお店「Proots」

沖縄を想う好奇心くすぐられるお店「Proots」

NEWS

「デッドストックたくさん連れて帰ってきました。」

その言葉をSNSで見かけた時、今までスニーカーや古着以外の文脈でデッドストックという単語を見かけたことがなかったので、つい私の指がその投稿に反応した。

美味しそうなベッコウ色とラムネ色のそれは、琉球ガラスだった。

画像からして沖縄のお土産屋さんで売っている琉球ガラスとそもそも雰囲気が違う。
それはカラフルではなく、無骨で、なぜかフォルムに温かみがあった。

お土産屋さんにある琉球ガラスとどう違うんだろう。
昔の琉球ガラスはどんな触り心地なんだろう。

私は実際にそれを手に取ってみたくなった。

職人技光る手描き看板の 「HAND SIGNPAINTERS」

職人技光る手描き看板の 「HAND SIGNPAINTERS」

NEWS

「もっと沖縄を大事にしないとなって感じるんです」

「沖縄を訪れた人が沖縄のこと好きで、大事にしてくれてるのを見ると、沖縄出身の私たちも、もっと自分達が大好きだと思っている沖縄について考えたり、行動したりしたいと思うんです。」

その言葉は重苦しくなく、率直で、誠実な言葉だと思った。

なんだかそれは「自分をもっと大事にしないと」と言っているようだった。

Translate »