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たった1度のズレを愛でる「rokkan COFFEE CREATORS」

たった1度のズレを愛でる「rokkan COFFEE CREATORS」

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沖縄に来てからコーヒーを丁寧に飲み始めた気がする。

東京にいたときは寝ぼけ眼で、ただただコーヒーを求めていた。

こんなことを言ったらコーヒー好きの方々にゲンコツされるかもしれないが、もはやカフェイン強めなコーヒーであればよかったのかもしれない。

気候のせいか味覚が少しずつ変わってきて、それを最初に感じたのはコーヒーの好みが微妙に変わってきたことだった。体の変化が顕著に現れる味覚。

その味覚を頼りに1杯のコーヒーが魅せてくれる緩急を感じ取る。

コーヒーを目の前にじっと見つめると、店主の奥武さんが言っていたことを思い出す。

「味わいの中で初めましてっていう出会いがある。ちょっと飲んで知り合い始めてきたけど、後半香りが変わってまた違った一面が出てきて、飲み干す頃にはもうなくなってしまって、短い時間だったけど楽しかった。また会いましょう。というストーリーが1杯にはあるんです。」

「レストランの食事にしても、ストーリーと起承転結が大事なんです。」と飄々と話す目の奥はとっても真剣でエスプレッソのように熱かった。

那覇市樋川にある与儀市場通りの景観に紛れて存在するrokkan COFFEE CREATORS。

rokkanは「第六感」からくる。

お店のお話を聞いていて一つ間違いないのは、店主の奥武拓也さんは「感覚」や「直感」に重きを置く人だ。

これが記事でなかったら「バイブス」と言ってしまいたいところだが。(おっと言ってしまった。)

ここ与儀市場通りも昔は戦後すぐの農連市場で、商店が立ち並び、通りを歩けば肩がぶつかるくらい人がひしめき合っていたという。相当な活気があったに違いない。

rokkan COFFEE CREATORSがある場所も元々は八百屋さんだったそうだ。

そんな与儀市場通りも今ではシャッター街になってしまった。

別名「グーサン通り」というらしく、グーサンは沖縄の言葉で「杖」という意味だそうな。

要するに、ノスタルジックなおじいおばあの通り。昔は歴史が光る通りだったが今ではしょんぼり。

そんなガラガラなストリートを見た奥武さんはビビッとくるものがあったのかここに即決したという。

「通り自体は死んでたんですけど、それが最高だったんです!」

「日常に寄り添うような非日常空間を作りたくて。カオスが好きなんですよ。ここの通りは人がひしめき合っていた空気感がそのまま残ってるんです。人の魂の残像じゃないけど。」

ここのメイン通りは筋道に旅館が立ち並んだりと、ちょっと夜の匂いもする。

「昼と夜が同居してる空気がそのまま残ってる感じがすごく好きですね。」と満面の笑みで語ってくれた。

ここグーサン通りに2019年にオープンしたrokkan COFFEE CREATORS。

コロナ前だったこともあり、この辺には観光客向けの激安ホステルなどが存在し、外国の観光客におじいとおばあ、それに猫。といった具合に「もはやここはどこ?」となる感じが奥武さんはとても好きだったそう。

ここrokkan COFFEE CREATORSは心地の良い不協和音を作り出しているのかもしれない。

奥武さんは生粋のウチナーンチュ。

沖縄の芸大出身で、プロダクトデザインを学んでいたそうだ。

どうりでデザインがベースにあるからか、お店の作りが格好いい。

一歩踏み入れると、先ほどの通りとは異質なインダストリアル感のあるインテリア。

rokkanのロゴは琉球王朝時代の家紋「左三つ巴」(ひだりみつともえ)からインスパイアされている。

見えてきましたか?

そう、お豆が見えてくるでしょう。

ロゴデザインに奥武さんのコーヒー愛が香り高く滲み出る。

奥武さんはある偉人の残した有名な格言をコンセプトにものづくりをしている。

「コーヒー、それは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、そして恋(愛)のように甘い」 – シャルル・モーリス・ド・タレーラン・ペリゴール

美しさの中にちょっぴり地獄も魅せたいなんて。

優美に飴と鞭をコーヒー1杯に仕込んでいくのだ。

コーヒーを始めたきっかけについて聞くと「どのメディアでも取り上げてくれないけど、モテたかったんですよね」と爽快に笑った。

そんな冗談を飛ばす奥武さん、コーヒーの虜になったのは20歳くらいの時。

好きになって、自分で焙煎機を買って、そこからずっとコーヒーに携わる仕事をしながら独学で学んできた。

お店の特徴でもある「オーダーロースト」はコーヒー豆を買う際にロースト具合をお客さんが選べるというから驚きだ。

「ステーキを食べに行ったらお肉をウェルダン、ミディアム、ミディアムレア、レアって選べるじゃないですか。でも全部既に焼かれたお肉しか売ってない状況って嫌じゃないですか?このお肉はこう焼きたいっていうお客さんもいると思って。」

おお、納得。

お客さんの意向に添えるようにと小型の焙煎機を探し、韓国から取り寄せたそう。

「生豆の選択権をお客さんが持っていても良いなと思って。」と頷いた。

実は沖縄にはスペシャルティーコーヒー農園が3つも選出されている。

スペシャルティーコーヒーとは、徹底的に品質にこだわり、農園や生産者の情報を追跡できるよう管理された上で生産されているコーヒー。サステナビリティとトレイサビリティが重要なのだ。

カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。(From seed to cup

日本スペシャルティーコーヒー協会

コーヒーは生産国から消費国へ輸送されることが一般的だが、厳密な評価基準を持って認証されるこのスペシャルティコーヒー、沖縄の場合、生産と消費が完結されるという。

「期間限定で沖縄のコーヒーを出しているところが多いんですけど、沖縄に住んでいるんだから沖縄の豆を扱いたいと思って。」と奥武さん。

「海だけじゃなくて、観光に代わる新しいアイデンティティを沖縄に作れるんじゃないかと思うんです。」 飾らないフレンドリーさで語る奥武さん。放つ言葉は真剣勝負のようだった。

北緯25度がコーヒーベルトと言われるコーヒーの生産に適した地帯。

沖縄は北緯26度に位置する。

しかもコーヒーの格付けは本来標高で変わってくる。

沖縄には高い山がないため、そもそも評価のポイントが難しいのだ。

それなのにスペシャルティーコーヒー農園が3つもあるのは本当に凄いこと。

こちらで飲んだ沖縄のコーヒー。これがまた今まで飲んだコーヒーとは全然違う。

飲みながらコーヒーの花が開いていく様子が目に浮かぶのだ。ぜひ試して欲しい。

たった1度のズレが更にユニークなコーヒーを生む。

沖縄にはやちむんや琉球ガラスなどの伝統的工芸品が多くあり、そして泡盛など沖縄ならではの嗜好品が存在する。

「コーヒーとやちむん、コーヒーと琉球ガラス、コーヒーと泡盛など、コーヒーっていうキーワードで繋げて沖縄に新しい文化をみんなで作りたいんです。」と奥武さん。

10月1日は国際コーヒーの日。

奥武さんはコーヒーを通して沖縄の観光業に代わるアイコンを作りたいというミッションを胸にイベント「コーヒーEXPO」を毎年主催しているという。

「コーヒーは繋がりが作りやすいんです。海外からも沖縄のコーヒーを飲みにくる人はいる。沖縄がコーヒーでアジアの中心になれる要素があるんじゃないかと思うんです。琉球の時代から先人は隣国と交流していたから、コーヒーを通してそれができると思う。」

更には国際的なEXPOへともっと大きい場にしていきたいと語る。飄然としたニュアンスからインタビューが終わる頃には、沖縄の未来を背負っていると確信する不思議なエネルギーの持ち主、奥武さん。

彼のようなパッションに満ち溢れた人がいる限り、沖縄の未来が輝く。

Photo by Makoto Nakasone

Text by Michiko Nozaki

店舗情報:

rokkan COFFEE CREATORS

住所 〒900-0022 沖縄県那覇市樋川1丁目29−9

営業時間  6:00-18:00

定休日 無休

@rokkancoffee

(*最新の情報は店舗のインスタよりご確認ください。)

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