
【6/9発売】沖縄カルチャーガイド『Champlu』最新号 vol.3、発売します
2020年の創刊から、島の“今”を追いかけてきた沖縄カルチャーガイド『Champlu(チャンプルー)』。その最新号となる vol.3 が、2026年6月9日に発売 します。北谷から名護まで地元と旅人が交わるスポット、夜を彩るバー、そして島で手を動かし続けるクリエイターたち──「新しい沖縄」をまるごと一冊に閉じ込めました。
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CULTURE
那覇から糸満へ車で25分ほど走らせると、また少し景色が変わってくる。
漁師の町「糸満」はなんだかマルセイユのような荒々しさもあるが、
アットホームさも兼ね備えたカルチャーが面白い。
昔は糸満市の公設市場と糸満ロータリーをつなぐ新世界通りにたくさんの商店などが連なり、連日賑やかだったという。今ではもうその面影はなく、閑古鳥が鳴いている。
連なる商店のシャッターはおりていて、活気はないがどこかノスタルジアで溢れているのも惹かれる。
それに浸るように道のど真ん中で野良猫が日向ぼっこしていて、とっても気持ちよさそうだ。
そんな糸満をダラダラと散歩していると、2年前に建て替えされた「糸満市場 いとま〜る」のちょうど入り口付近にとっても小さなお店を見つけた。
その名も「左官屋の庭」。
中を覗くと思わず引き込まれるようなクリーンな鉢が部屋中に置いてあった。


ここは植木鉢屋さん。
しかもよく見る鉢ではなく、手作りのセメントと素材を合わせたモルタルで固めた鉢なのだ。
お客さんが「こんな植物を植えたいから、こういう鉢を作ってくれないか。」と相談しにやってくる。要望に合わせて大きさや種類など本人と話しながら進めていくこともあるという。
セメントの鉢は正直あまりみたことがない。
コンクリートはどこか冷たい印象があると勝手に思っていたが、ここはなんだか穏やかな空間だ。

ここの店主、深井ちひろさんのお話を聞くと、その穏やかさがわかった気がした。
深井さんは東京出身で、左官屋の旦那さんと四年前に沖縄に移住。
「沖縄の赤瓦の家に住みたい。」という願望を二人で叶えに海を超えてきたという。
元々植木が好きだったという深井さん。
何かできないかなと思い、家で何度も植木鉢の製作を夫婦で試みたという。
「通常の鉢は焼き物でできているんですが、このセメントの植木鉢は自然乾燥させるんです。壁と一緒です。」と優しく微笑んだ。


今年で作り始めて4年、「今ではいいものも悪いものも」材料にするようになったという。
この表現、実に独特。
というのも深井さんは沖縄の各地から面白いと思った土や砂利、貝など拾ってきては材料としているそう。
グレーの鉢は、黒砂とセメント。
白い鉢は、琉球石灰岩の砕いた粉、白砂と白セメント。
柔らかいオレンジ色の鉢は、赤土と白セメント。
それぞれその時の自然の土なので、毎回同じ色味にはならないそうだ。
また、海洋プラゴミや、海でBBQした人達が残していった焼け跡に白骨化した珊瑚なども、煤がついた感じが綺麗な発色をするそうで自分で拾ってくる。


この海洋プラゴミコースターはその時とってきたゴミを使うので、一枚一枚模様が違う。
なんだかごめんなさいという気持ちになるが、あまりにキュートで欲しくなってしまう。
この良し悪し含め受け入れる心意気がなんだかセラピューティック。
無理やりかっこいいことをしようという邪念がいっさい見えないのだ。
だから無性にセンスの良い作品になっている上に、穏やかな空間になっているのではないだろうか。
「これって左官屋の壁見本だったんですけど、インテリアで欲しいっていう人がいてそれで飾ってます。」とハハッと笑って教えてくれた。
もはやアート作品のようにも見えてしまう。
まさにこういう偶発性を楽しみながら作品を増やしていくところが、爽やかな美のセンス。


住宅に使われる材料は化学のものが多いが、コンクリート自体は自然にもあるものだという。
実は炭酸カルシウムのセメント作用により砂や礫が固まった土地のような、ある意味自然にできたコンクリートも世の中には存在しているものなのだ。
また自然に近いこともあり、この植木鉢は土が弱酸性になる。
弱酸性の土壌は多くの植物にとって優しい環境だ。
珍しい植物の苗を持ってきては、楽しみながら植えているそう。
深井さんが丁寧に一つ一つ植えている姿が想像できる。


「おばあさんが言ってたんですけど、植物でも外来種でも沖縄は受け入れて混ぜて沖縄のものにする、新しい沖縄にしていくって話していて、そういうところが好きですね。全てを拒否しない。混ぜながらやっていくカルチャーが素敵ですよね。」と深井さん。
深井さんは、まさに良し悪しも「受け入れる」そんな考え方を取り入れているのだ。
お話しすればするほど、なぜこの空間、なぜこの植木鉢から「癒し」が波及されているのかがわかってきた。
「あと、特に作り手にとっては素材がいろんなところにあるから、やってみようっていう気持ちになりますね〜。」
この沖縄のやってみよう精神。
だんだんと「なんくるないさ」は実は「チャレンジ精神」の意味も含まれているのではないかと思えてきた。
温かい気候とウチナータイムが織りなす「なんくるないさ」の言葉に潜むレジリアンス。
受け入れられる広い心でチャンプルーできるのが、沖縄なのかもしれない。

深井さんの「左官屋の庭」には癒される作品がいっぱい。
観光地から少し離れてちょっぴりディープな方にも是非足を運んでみて。
本来のチャンプルーも見えてくるかもしれない。


店舗情報:
住所 〒901-0361 沖縄県糸満市糸満989−83 いとま~るE-4
営業時間 9:00-16:00
定休日 月曜日
@sakanyanoyome
(*最新の情報は店舗のインスタよりご確認ください。)
この記事のような沖縄の“今”のカルチャーは、ガイドブック『Champlu』に掲載しています。最新号 vol.3(6/9発売)はこちらからご購入いただけます。

2020年の創刊から、島の“今”を追いかけてきた沖縄カルチャーガイド『Champlu(チャンプルー)』。その最新号となる vol.3 が、2026年6月9日に発売 します。北谷から名護まで地元と旅人が交わるスポット、夜を彩るバー、そして島で手を動かし続けるクリエイターたち──「新しい沖縄」をまるごと一冊に閉じ込めました。

こんな静かな所に醸造所があるんだろうかと不思議に思うくらい閑静な住宅街の中にCliff Beerは佇んでいた。

「ふと立ち止まって、自分の暮らしを考えてこれから5-10年仕事を続けていく中でどういう生き方をしていきたいかな。」と自問自答した。