
「末廣ブルース」立ち飲みスタイルが楽しい元和菓子屋の居酒屋(那覇市)
牧志公設市場もほど近い、那覇市松尾の夜の道で、煌々とネオンを輝かせるのが2019年12月にオープンした「末廣ブルース」。100年ほど前から続いていたという和菓子屋の雰囲気をそのまま引き継いだ、異色の立ち飲み屋だ。
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CULTURE
小さく可愛らしい茶器をそっと鼻に近づけるとえらく甘い、なんともミルキーな香りが漂ってきた。
お茶なのにミルキーな香りがするので戸惑っていると、
「それ、乳香っていうんです」と店主の山内さんが教えてくれた。
口に含んで鼻から息を細く長く吐き出すと、鼻腔の奥にかすかなミルクキャンディーが見え隠れする。
これは面白いぞ。
直感的にそう思った。
お茶と言ってもこれは無造作に冷蔵庫に入れてある日頃のお茶とは全く別物だ。
こってりとした芳醇さがあり、それでいて上品だった。

「茶樓雨香」は以前Champluでも取材をしたセレクトショップ「Waters」の2階にある。
前回の取材ではお茶屋さんをやるつもりなんですと話していたが、早速有言実行されていた。
セレクトショップを入って奥の階段を2階に上がるとしっとりとした空間が現れる。
ここが「茶樓雨香」だ。


茶樓雨香の最大の特徴は、長く居座り、お茶を何番煎じでも心ゆくまで楽しんでいいという。
カフェだと長居することに多少遠慮してしまいがちだが、ここは本来の中国茶の楽しみ方として、
ゆっくり長く滞在することを薦めている。
「お客さんにたくさん長く居て頂くのがベースで、中国茶を楽しんでもらいたいんです。」と店主の山内真さん。


そもそも中国茶って普通のお茶と何が違うの?と思う方も多いのではないだろうか。
中国茶には何百、何万と種類があると言われているが一般的には発酵度によって6つのカテゴリーに分けられる。
「緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶」
しかも全て同じ茶葉の種類からできているのだ。
ここ「茶樓雨香」では厳選された11〜15種類の茶葉を置いている。
みんなで試しながら、違いが「わかりにくい」ものは省いているという。
そして、スタッフ全員がこれだ!と一致するもののみを置いている折り紙付きのセレクト。

中国茶の茶楼と聞くと、いろんな茶器があったり、やり方に順番があるのではないかと少し怖気づく人もいるだろう。でもそんなことはない。
独特で美しい茶器などを使って楽しむ中国茶だが、実は敷居が低く誰でも楽しめるそう。
日本の茶道は様々な作法が求められるが、中国茶の場合は茶楼でダラダラ緊張を解きほぐすような感覚なのだと教えてくれた。

元々中国に20年近く、買い付けなどで出張を繰り返していたという山内さん。
「よく出張で訪れていた広東省では商談の時に必ずお茶を飲みながらするんですよ。お茶を通して距離が縮まる感じがあって。」
確かに一般的なビジネスの接待だと、ご飯やお酒などを一緒に交わしてお互いを少しずつ知っていくことが多いが、お茶を共にすることで距離を縮めるのも、自然に緊張が解かれる実に友好的な方法かもしれない。
「一階のWatersでも閉店前くらいになるとお客様や、取引先にもお茶を出したりしたんですが、みんなホッとした表情になるんですよね。この感じビジネスに使えるなと思って。」そういうと微笑んだ。
肩肘張らないお茶の飲み方に親しみを覚えた山内さんは早速茶楼を開いてみようと思ったそうだ。
「趣味が仕事みたいな感じなんで、みんなと楽しんでやってます。」


山内さんとお話をしていてハッとすることがあった。
中国の沿岸部にコロナ前は月に一回は行っていたという山内さん。
商談で使う茶楼や茶館は、そこら辺にあるカフェよりも明らかに高い価格設定になっている。
そこの茶楼の店主とお話をしている中で、キーとなる言葉をもらったという。
それは「中国茶のライバル市場はワインだよ」と言われたそうだ。
そう。一般的にお茶の対義語としてはコーヒーかと思っていた私たちだったがサラリと概念を覆してきた。
その出来事を聞いて、その場で私はものすごく納得がいった。

一杯一杯を大事に頂きながら、何番煎じかで変化する茶葉の香りを楽しむ。
少しの温度の変化でも香りが移り変わっていくことに気づき、お茶請けを少しずつかじりながら余韻に浸る。
その一連の流れは、まさに質の良いワインをちびちび楽しむ感情の流れと時間のボリュームと匹敵する。
変化さえ慈しむことで、目の前のことだけに集中できる不思議な空間となる。
ふと、深呼吸することを思い出した。
豊かな時間の過ごし方をしていることに気づき、まるで心が整うような感覚へと導かれる。
表情が柔らかくなり、やがて目尻に優しいシワが現れる。
あぁ、このことか。私は体の芯から穏やかになった。

「体がポカポカ温まってきたら、それがお茶に酔っている状態なんです。」と山内さん。
きっとどんな人間でも表情に出るのだろう。
その穏やかな「酔い」を感じながら、目を閉じて温泉に浸かるカピバラを想う。
ほぼ同じ状態に違いない。
こんなにリラックスして商談をするのは理にかなっているかもしれない。
心の余裕が相互の尊重を高め、誠実な交渉ができるような気さえする。

最高の中国茶を口にするまでの道のりにはさりげない心遣いが大切だ。
中国茶は茶器もしっかりと予熱してあげ、花が開くように茶葉が開きやすくしてあげることを欠かせない。
質の良いお茶葉ならば洗茶も特に必要ないという。
もちろん出すお湯にもこだわっている。
お茶本来の香りを出やすくするため、必ず中硬水を使用するそうだ。
それも錆びにくい砂鉄の鉄瓶を使って一度湯を沸かす徹底ぶり。
砂鉄の鉄瓶はお湯が触れた際に鉄イオン(鉄分)が溶出し、ミネラル豊富のお湯となる。
そんな一手間があったのかと感心。

「ローカルの人だけでなく、沖縄に観光できてくれた人も、興味を持ってわざわざ来てくれるんですよ。」
「入り口をちょっと広くして、中国茶の良さと美味しさをみなさんにもっともっと伝えていきたいです。」と山内さん。
ちなみに「茶樓雨香」独自の茶葉をウェブで販売し始めたそうだ。
中国茶のお手軽さと美味しさを広めることに余念がない。
店内には素敵な茶器も販売しており、この世界にすっかり魅了されてしまった今、どんどんハマってしまいそう。

今年のクリスマスプレゼントには素敵な茶葉と茶器なんて如何だろうか。
甘ジョッパイお茶請けを用意して、みんなで温かいお茶を囲んでおしゃべりなんて、一緒に過ごす時間まで乙なプレゼントになりそうだ。
Photo by Makoto Nakasone
Text by Michiko Nozaki
店舗情報:
茶樓雨香(チャロウウカ)
住所 〒901-2316 沖縄県中頭郡北中城村安谷屋1468-4 Waters 2F
営業時間 13:00-20:00 (L.O. 19:00)
定休日 木曜日・金曜日+臨時休業あり
(*最新の情報は店舗のインスタよりご確認ください。)

牧志公設市場もほど近い、那覇市松尾の夜の道で、煌々とネオンを輝かせるのが2019年12月にオープンした「末廣ブルース」。100年ほど前から続いていたという和菓子屋の雰囲気をそのまま引き継いだ、異色の立ち飲み屋だ。

通りに面して大きく開いたカフェスペースには、旅人もローカルも入り混じって、ゆんたく(おしゃべり)に興じる様子が見える。そこは、牧志公設市場周辺に幾筋も通る商店街のひとつ、農連市場そばで国際通りの裏口的な場所にあるのが「太平通り」。

カフェやセレクトショップなど、ハイセンスなお店が軒を連ねる「港川ステイツサイドタウン」。観光客を中⼼に賑わうこの街で、2020年9月のオープン以来、香りの専門店として親しまれてきた「THE FLAVOR DESIGN. STORE OKINAWA」は、今年で5周年を迎えた。