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味蕾もソウルもノっちゃう「ぱん工房 おとなりや」

味蕾もソウルもノっちゃう「ぱん工房 おとなりや」

CULTURE

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子供の頃に好きだった絵本はパンが出てきた絵本が多かった。
ページに溢れんばかりのいろんな形をしたパンや、いろんな味のパン、そしてグリム童話に出てきそう
なパン。そんなことを思い出させてくれるような「ぱん工房 おとなりや」は、ここ読谷にある。
興奮を隠せず辺りを見渡すとますますおとぎの国に入り込んだような気持ちだ。

朝8時からオープンしていて午後には大体SOLDOUTの文字が。
そんな大人気店の店主斉藤さんは一言で言い表せない面白い経歴をお持ちだ。
元々関西出身で、8歳の時に読谷へ移住。小学校3年生の時からお菓子とパンを作るのが趣味だったという。昔からパン屋の才能があったようだ。


高校卒業してからはボクサーを目指し、昼はパン屋で働き、夜はジムでトレーニングの日々。
最終的にやめて1年程バックパッカーという道を選んだ。なんと沖縄から北海道まで徒歩と自転車で日本列島を横断したというから驚きだ。その後は東南アジアやインドでバックパッカーとしてしばらく放浪し、沖縄へ戻ってきたという。
これだけ聞くとなんとも興味深い。
そんな斉藤さんは旅から戻り、今までとは違う景色でパンを見ようと北海道の有名店で5年間修行。
その後独立し、育った土地である読谷に「ぱん工房 おとなりや」をオープン。

「沖縄はね、熱い人が多いんですよ。何かやってやろうっていう人が多くて。尊敬できる大人が結構いるのはすごく刺激になります。」と斉藤さん。小さな時に移住してきたからこその経験もあるのだろう。最終的に沖縄の魅力は人にあると語ってくれた。


自身でオープンしたきっかけにもなったのが、長男が生まれてからだという。
アレルギー持ちで小麦、卵と乳製品もダメで小さい頃はあまり外食できなかったそうだ。
そんなこともあり、自分の子も食べることができるパンを。と思い立った。
「ぱん工房 おとなりや」がすごいのは原材料を細かく提示しており、プライスカードも何が入っているかで色で仕分けている。パンだけでも70種類はあり、焼き菓子を入れると80-90種類にも及ぶ。
ここまでの種類を毎日作るのは実に見事だ。


店内にはパンだけでなく近隣のオーガニック野菜や繋がりのある作り手の食品なども置いている。
コロナでイベント毎が減ってしまった中でも販売できるような助け合いの場所作りをしているという。
「バランスっていうのを一番念頭においていて。偏らないってことを大事にしてますね。パン屋ってみんなが来れるじゃないですか。客層しかりバランスがちょうどいいんですよ。普段から社会的なことも含めて自分のメンタリティーの中でバランスを大事にしています。」
果てしない旅に出ていたからか、何気ない一言の重みと飾らない職人魂が伝わってくる。

店内で耳を澄ませるとグルーヴ満点のソウルミュージックがいい音量で流れている。
壁には一面にヴァイナルレコードとパン屋には珍しい大きなスピーカー。

「これは完全に僕の趣味ですね。笑 ブラックミュージックが好きで高校生の時からずっとを集めてま
す。小学生の時から父親のように育ててくれた人がボブ・マーリーが好きでずっと聴いてて。最初はず
っと聞かされてる感じで嫌だったんですけど。それが耳に残ってて、しばらくしてから高校生の時にま
た懐かしくなって聴き始めましたね。」と笑った。
耳が大事なルーツを覚えていたに違いない。レゲエから次第にジャズ、そしてファンク、ソウルへと発
展していったそう。最近はブラジルの音楽も相当ディグっているらしい。
「形のある良さを子供達にも伝えたいんです。今は配信とかばっかりですからね。」と目を細めた。

奥の棚に堂々と鎮座するのが、ブラックミュージックを聴いて育ったレーズンの天然酵母だ。無数のCDと仲良くしているのが愛らしい。

店名の由来について聞くと「最初は隣にあったらいいな。って思ってて、お隣や。あっ、音がなってるやんってなって、音鳴りや。笑」とチャーミングな由来を教えてくれた。しっかりダブルミーニングまでも仕込んでいたとは流石のセンスである。

子供から大人まで美味しいパンを求めに行くのも良し。グルーヴを求めに行くのも良し。
味蕾もソウルもノっちゃうパン屋さんはここ「ぱん工房 おとなりや」オンリーワンだろう。
すぐに売り切れちゃうため早めに行くことを絶賛オススメする。
(ちなみに一番人気は琉球松というフレンチトースト。外はカリカリ中ふわふわの絶品なので是非!)

店舗情報:
ぱん工房 おとなりや
住所 〒904-0325 沖縄県中頭郡読谷村瀬名波633−2
営業時間 8:00-18:30 (SOLD OUT CLOSE)
定休日 木曜日、日曜日
@otonariya.yomitan

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